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岸田吟香に関する杉山榮執筆の記事と著作(執筆順)

岸田吟香を語り継ぐ会
JOKK OKAYAMA杉山榮が放送局のマイクの前(昭和6年)

○○○○ @雑誌「新聞知識」(昭和13年11月1日発行)
雑誌「新聞知識」11月号に杉山榮の「新聞雑記帳」と題する記事が掲載されている。同年10月頃の執筆で、我が国最初の従軍記者である岸田吟香を紹介している。戦況報道が人気を博し東京日日新聞の「紙価が著しく昂まった」ことから、以後各社は競って従軍記者を派遣したと当時の様子を記している。また第一次世界大戦の青島戦に美土路昌一氏(津山市名誉市民、元朝日新聞社社長)も記者として従軍したことを紹介している。


○○○○ A郷土誌「月刊おかやま」(昭和25年1月5日発行)
郷土誌「月刊おかやま」新春特大号に「県先覚者銘々伝(その一)岸田吟香(上)」と題する作品が掲載されている。昭和24年11月21日の執筆で、新連載企画の最初に岸田吟香を取り上げていることから、吟香に対する思い入れの強さを感じる。上下二回で完結させるため長文の作品となっているが、学術的な堅さを押さえ、一般読者にも読みやすい読み物風の偉人伝となっている。


○○○○ B郷土誌「月刊おかやま」(昭和25年4月10日発行)
郷土誌「月刊おかやま」第3号に続編の「県先覚者銘々伝(その二)岸田吟香(下)」が掲載されている。昭和25年1月11日の執筆。校正されないまま発行されたのか、手持ちの雑誌に膨大な量の校正の跡が残されている。自分の書いた記事が校正されずに誤字脱字だらけで出版されたことに新聞人として耐えられなかったのか、連載企画を二回で打ち切ってしまったようだ。


○○○○ C日本新聞協会機関誌「新聞研究」(昭和26年12月25日発行)
協会機関誌「新聞研究」に「岸田吟香遺聞」と題する作品が掲載されている。文末に51・8・30とあり執筆時期がわかる。冒頭に「津山市の新聞記者会の依頼で、昼夜『岸田吟香略傳』の執筆を急いでいる」、「吟香の事蹟や貢献に関しては全て『略傳』に譲ることとし、ここには彼に関する遺聞二三を拾い上げて、彼の横顔の一断片を窺うことにしよう」と記している。 この時期に岸田吟香研究をライフワークと定め、更なる資料の収集と分析、伝承の検証、誤謬の訂正、業績の再評価等を行っていたことが覗われる。


○○○○ D岸田吟香顕彰会「岸田吟香略傳」(昭和26年9月20日発行)
昭和26年9月26日に開催された岸田吟香顕彰会発起人会の席上で、この日のために準備された「岸田吟香略傳」が配布された。その序文に、津山市の新聞記者会の主唱のもとに岸田吟香顕彰会が設けられたこと。自分に対しては吟香伝の刊行と碑文の執筆等が求められたことが記されている。いつ吟香伝の執筆依頼を受けたかは定かでないが、前掲の「新聞研究」に昼夜「岸田吟香略傳」の執筆を急いでいると述べているので、同年8月から9月頃の執筆と推測される。 岸田吟香略伝や次掲の先駆者岸田吟香の執筆において特筆されるのは、作州出身のジャーナリスト達のネットワークの存在と惜しみない協力である。美土路昌一氏(元朝日新聞社社長)の指示により、池上退蔵氏(久米郡出身の朝日新聞東京本社記者)が岸田家の人々に直接面会して取材を行っている。その調査結果が本著を更に正確なものとしている。短期日で吟香略伝が執筆出来たのは、それまでの取材で蓄えた豊富な資料や知識とネットワークからもたらされた新情報、加えて新聞記者として鍛えられた筆の速さと優れた集中力のなせる業と思われる。


○○○○ E苫津学園岸田吟香顕彰刊行会「先驅者岸田吟香」(昭和27年4月5日発行)
杉山宇三郎氏の依頼により「先驅者岸田吟香」が苫津学園岸田吟香顕彰刊行会から出版された。昭和26年11月から昭和27年2月にかけて執筆されている。昭和26年10月27日の杉山宇三郎氏の日記に「出岡、杉山榮氏を訪問、岸田吟香を読物なる様執筆を依頼右二件快諾を得た」。また11月19日には「杉山榮君を北方のお宅に訪ね岸田吟香著述の件依頼特に頁数、価格、印刷につき打ち合わせて四時半発かえる」との記述があるので、この頃執筆に取り掛かったものと思われる。また昭和27年2月27日には「出岡、山陽活版所岸田吟香印刷」との記述があり、この時期には既に印刷に廻されていたものと思われる。 本著は、吟香翁の弟助三氏の孫に当たる岸田準一氏から「先生の資料蒐集の御苦心を察し、我が国最初の正伝をものにされたものとして感謝感激に堪えません」と岸田家の親族からも高い評価を受けた。次掲の「三代言論人集」の巻末年表に編集者が「比較的詳細且つ正確にちかいと思われる『先駆者岸田吟香』(杉山榮著)が刊行された」と記している。


○○○○ F時事通信社「三代言論人集」(昭和37年11月20日発行)
「三代言論人集」第一巻に杉山榮の「岸田吟香」が収録されている。全八巻中の第一巻目で、登場人物全二十一人中の二人目に「岸田吟香」が収録掲載されている。榮70歳の時の出版であるが、岸田吟香の研究者としてこれを集大成と位置づけ、大幅に加筆修正している。ページ数は「先驅者岸田吟香」とほぼ同であるが、文字数は増え、内容はより正確になっている。 杉山榮は戦前、時事通信社の前身である同盟通信社の理事をしていた時期があり、嘗ての縁により時事通信社から執筆の依頼があり出版されたものである。

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