このころ、香水といえば舶来品がほとんどでしたが、吟香は楽善堂ですでに「白薔薇水」などオリジナルの香水を商品化していました。
国産香水の先駆けといえますが、原料に用いたのはラベンダー油、ローズマリー油、バラ油など外国産の香料(※2)。そうしたなか、国内の植物で香料の抽出から手がけようという開拓使の取り組みには、大いに興味をそそられたことでしょう。
吟香は、製法についての助言はもちろん、開拓使が抽出した香料の品質はどうか、どのぐらいの価格なら販売が見込めるか、といったことにも親身に意見を授けています。
ハマナス油については、「香水の製法で混和して時間をおけば、舶来のバラ油よりも優れた香りがする。
舶来ものより安ければ売りさばける」と評価。また、米国人化学者が酷評したクロモジ油についても、「石けんの香料に適している。
自分が誰よりも高く買い上げる」と述べています。
そして実際、ハマナス油とクロモジ油は、一部は開拓使が香水に仕立てて販売や輸出を試みたものの、多くは吟香が香料のまま買い上げました。
彼はまた、自身で抽出すべく、ハマナスの花びらも買い上げています。
そして、明治14年に東京・上野で開催された第二回内国勧業博覧会では、吟香の出店コーナーに、ラベンダー油やバラ油など西洋の香料を用いた香水とともに、ハマナスやクロモジの香水が並びました。
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